よろず二次創作文字書きブログ。 現在ＴＯＶのおっさんと青年に夢中。 更新は陸ガメより遅く山の天気より気まぐれ。

[PR]

2025/04/07

• Newer : 提出物仕上げるの忘れてて今までかかった。
• Older : リトル・プリンス

ラブレター フロム イエスタデイ

未来同居妄想の、短いカズケン。
佳主馬の妹の名前捏造注意！です。

キーワードは花とわんこと歌と補助輪　↓





佳主馬くんへ

今日花が咲いたよ。
佳主馬くんが酔って帰ったとき、買ってきた鉢のやつ。
ネームプレートもついてないし、佳主馬くんあの時何かもごもご言ってたけど、よく聞き取れなくて結局名前が分からなかったあの植物に、真っ白な小さい花がついたんだ。
俺植物の世話なんてしたことなくて、何も分からなくて…肥料も何もやらなかったんだけど、毎朝水だけちゃんとあげてたんだ。
花が咲いてる今なら、図鑑でも探せそうだと思ったよ。
ベランダで気持ちよさそうに風に揺れてるから、枯れる前に佳主馬くんも見られるといいね。

健二





健二さんへ

枯れる前に見れた。確かに小さくて可愛かった。水やりしてくれてありがとう。
植物図鑑をめくって調べてみた。どれもいっしょに見えて、結局名前は分からなかったけど。
そうだ。俺からもひとつ、健二さんが喜びそうなニュース。
隣の家の人がこっそり飼ってたビーグル犬が、子供を産んでたよ。
親犬はよくしつけられてて鳴かないみたいだけど、子犬の高い鳴き声がうちまで聞こえてきちゃって、それでちょっと様子見に行って…６匹くらいいた。ハヤテのことを思い出した。
管理人さんにも見つかったんだけど、来季からこのマンション、うちの階から上はペットOKになるから問題なしだって。運がいいよね。
折角だから、ぼくたちも一匹貰って飼ってみない？
次の土曜、都合をつけてもらったから一緒に見に行こう。
今度はぼくも、きちんと世話をするよ。

佳主馬





家族が増えたね！
そうだね。

お祝いの日には、いつもの。
や、やっぱりやるの？

歌おう、健二さん。





佳主馬くんへ

ビッグニュース！
今日佳主沙ちゃんが「自転車の補助輪とれたよ」って電話くれたよ！！
おにいちゃんに電話で話したかったのにってとっても残念そうだった。折り返しかけてあげて！

…それから、あのね。
僕が一番に聞いちゃってよかったの？って訊いたら、「健二くんも佳主沙のおにいちゃんだからいいの」って言ってくれて、嬉しくて、ちょっと泣いちゃったんだ。
佳主沙ちゃんすごく心配してくれてたから、もしまだ気にかけてくれてたら、大丈夫だよって、佳主馬くんから伝えてもらえないかな。お願いします！

健二





佳主馬はダイニングテーブルの上に乗ったメモを摘み上げ、口元にかすかな笑みを浮かべると、パンツのポケットから携帯電話を取り出して電話帳を開いた。
一番上の分類項から「実家」を呼び出し通話ボタンを押す。

「母さん？…うん、うん。元気。ね、佳主沙、補助輪とれたんだって？ん、健二さんから聞いた。まだ起きてる？」

しばしの沈黙の後、受話器から元気な少女の声が漏れて響いた。

「こんばんは。自転車、一人で乗れたんだって？…うん、えらい。がんばったね。怪我してない？ほんとに？……調子乗りすぎ。こけないように気をつけるんだよ。……うん。おやすみ。」

ピ、と通話終了のボタンを押したところで、玄関の扉が開いた。
足元でさかんに尻尾を振り、佳主馬を見上げていたビーグルの子犬が、一目散に玄関へと駆けていく。
先を越されて少しむっとしたが、茶色い体を腕に抱いてすぐに部屋へ入ってきた健二を見とめてすぐ笑顔に変わる。

「おかえり、健二さん。」
「佳主馬くん、ただいま！　って、わぁ…!!」

テーブルに乗り切れないほどの料理の皿を見て、そのどれもが自分の好物ばかりなのを見て、健二は子供のように眼を輝かせた。
言葉を失くす彼の目の前、佳主馬は椅子を引いて、芝居がかった仕草で恭しく一礼した。

「席に着いて頂けますか？」

今日の主役さん、と付け加えた彼に手を引かれ、スーツ姿のままの健二が椅子に腰掛ける。
床に下ろされた子犬は、今はかまってもらえそうにないと察したらしい。リビングの方へ駆けて行って、ソファのお気に入りの位置でぺったりと腹這いになった。

「こんなにたくさん…食べきれるかな。」
「食べてもらわなきゃ困るよ。健二さんはもっと太って。僕の愛だと思えば入るでしょ？」
「それは残せないなぁ。」
「残したら、ぼくが食べちゃうから。」

後ろから肩に手を置き、左の頬に音を立てて口づけられるのをくすぐったがりながら、機嫌のいい健二は珍しく軽口に応えた。

「…全部食べても、それで太ったら、結局美味しく食べられちゃうんじゃない？」
「それは…まあ、そうだけどね。」

あははは、と心底おかしそうに笑う健二を見ていると、毒気を抜かれてしまうからしょうがない。
佳主馬は恋人の向かいの席に着いて、きちんと背筋を伸ばした。
今日めでたく誕生日を迎える愛しい人は、いつもどおり、でもいつもよりちょっと艶めいてて、綺麗にみえる。

「ハッピーバースデー、健二さん。」
「…ありがとう。」
「では一曲。」
「え、やっぱり今年もなの!?」
「当然。」

恥ずかしそうに視線を卓上へ下ろす健二を見た後、目を閉じて、佳主馬はバースデーソングを歌った。
あの夏、曾祖母の葬式で誕生日を祝う歌をいっしょに歌ったとき、やたらはしゃいでいたこのひとは、それまで誰かの誕生日を祝うために歌ったことも、自分の誕生日に祝いの歌をもらったこともなかったから、今日はほんとに楽しいのだと、本当にうれしそうに佳主馬に教えた。
だから佳主馬は、たとえ健二がどれだけ恥ずかしがっても、毎年歌い続けている。

「俺、もう二十歳も越えたのに。」
「ぼくだってもう二十歳だよ。」
「余計おかしいよ。」

どんなに恥ずかしがっても、毎回照れていても、健二は言葉と態度でいつも佳主馬に嬉しいと伝えてくれるから。

「ありがとう、佳主馬くん。」

その言葉と笑顔のためなら、生きている限り誕生歌を歌い続けるつもりでいる。

「もう何回目だっけ…早いね。」
「そうだね。」

誕生日以外でも、お祝い事があれば佳主馬は歌った。
鼻歌でもなんでも、その日の気分次第。なんでもいい。
いつも健二は引っ張られ、声を揃えて歌ったときにはお互い音痴だと苦笑しあう。
それが当たり前になるくらいには、年を重ねた。



一緒に住むようになって、最初のうちはなんとか時間を合わせてなるべく一緒にいられるよう努めた。
それでもどうしようもなく忙しさが募り、すれ違うようになってからは、喧嘩するよりその空白を埋めることに必死で。
メールもチャットも便利な時代なのに、健二はある日いきなり机上に手書きのメモを残して仕事へ行った。
佳主馬が家を空けているあいだに起こったこと、日々の小さな出来事を、手短に綴った直筆のメモが、書いた本人のぬくもりを宿しているように思われて、見つけたときは自分でも驚くほどの喜びを感じたものだ。
花が咲いて
犬を飼って
妹は補助輪が外れて
今日は二人で迎える何度目かの誕生日

不変のものなどない。
どんなに平凡な繰り返しのように見えても、日常は緩やかに変わっていく。
だけど、

「今年も来年もずっと先も、きっとぼくたち、いいようにしかなっていかないから。」

健二さんをずっと幸せにしてあげる、と堂々と言い放って笑う佳主馬に、健二は幸せそうに目元をゆるませて、よろしくおねがいします、と　はにかんだ。





ラブレター フロム イエスタデイ





好きだと書いたことは一度もないけど、いつでも君への愛を綴っているよ






********************************************

山／野／裕／子さんの「ビーグル」という曲をまんまなぞらせていただきました。
きっとこいつら万年新婚のまま死ぬまでラブラブなんだろうなあ。なんてこった。
そして妹さんの名前を「佳主沙（かずさ）」ちゃんに設定していまいました。
三文字でおそろいがいいなあと思ったので、カズ、まで揃えてあとは片っ端からひらがなを入れていったんですが、カズミとかカスガとかカズエとか色々候補があって迷っちゃったよ…。

2009/10/28 サマヲ（カズケン） Trackback() Comment(2)

• Newer : 提出物仕上げるの忘れてて今までかかった。
• Older : リトル・プリンス