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久々に13歳と17歳です。しかしまた短め……。
すきですと告げましょう
相手からもすきですと言ってもらいましょう
手をつなぎましょう
二人きりで出かけましょう
お別れのキスをしましょう
ぴったりとくっついて抱き締めあいましょう
理由の無いキスをしましょう
長い人生の約束を贈りましょう
このような手順を踏んで、恋の段階は進むものです。
みーん みんみんみんみんみん じ―――――――――ぃぃぃいいいい
みんみん蝉がないている。
額、首筋の髪の生え際に生まれた汗の玉が、育って重力に従い肌の上を伝い落ちる。
ぴくりと跳ねる指先。
体重をかける手のひらが、真新しい い草に押し付けられ、じんわりと痺れを訴える。
視界のほぼ全部を埋めようかという人影は、強い真夏の光が逆光になっているせいで表情まではよく見えない。
こんなに近いのに、と思う、その近さが不自然で、緊張感から喘ぐように浅い呼吸をした。
みーん みんみんみんみんみん じ―――――――――ぃぃぃいいいい
震える唇を見て、心拍数がまた上がった。
覚悟を決めて行動に移したはずなのに、吐きそうなくらい緊張している(この状況では死んだって吐けないし、吐かないけど)。
驚いている。これ以上ないほど目を見開いて、何も言えずにただ自分を見上げている、押し倒した細い人を見下ろしている。
唇を奪った。
興奮と歓喜で叫びたくなるけど、まだ勝ってない。油断なんてできない。
ここからどうしようか、どうすれば、一番自分の望む結末にもっていける?
シュミレーションを繰り返してもどうしても辿りつけなかった域についに来てしまった。ここからは、たった一つ間違えただけでも全てが破綻してしまうかもしれない。
「けんじさん」
情けないくらい声が震えている。
でもこれがいまの自分の本当の姿だ。取り繕ったところでこのひとにはもうみっともないところも随分見られてしまっている。意味は無い。むしろこの余裕の無さを、真剣さだととってくれたらありがたい。その通り、真剣すぎるくらい、あなたのことだけ考えているのだから。
「好きです」
薄い茶色をした瞳をじっと覗き込んで、人生で一度きりにするつもりの告白をした。
勘違いだなんて絶対に思えないくらいの、この身を内に燻り続け、あなたを見るたびに勢いを増し身も心も灼きつくす想いが伝わるように。
「ぼくは、健二さんが好き。」
みーん みんみんみんみんみん じ―――――――――ぃぃぃいいいい
表情なんてほとんど見えないのに、視線だけ強く感じる。
怖いくらい強く、ただまっすぐ見つめてくる目が、絶対に逃がさないと言っているような気がした。
そんなこと、言ってないのに。
顔の見えない彼が言ったのは、
「す、」
からからに乾いた舌が、いつものように縺れた。
「す、き?」
すきと、言ったのだろうか。
口をすこし開けていたせいで、舌と同じように乾いていた唇も、発語をぎこちなくしているようだ。
閉じ合わせて、唾液でしめらせて、頭の中に浮かんだ言葉を出すために、もう一度 開く。
「おかしいよ。」
みーん みんみんみ み゛み゛み゛っ
あ、逃げちゃったぁ と真緒らしき声が残念そうに言った。
間延びした声が、はっきりさせたくないぼくの絶望まで炙り出す。
「…おかしいって、なに。」
言ってはいけなかった。
口をついて出た。
「なにが、おかしいの。」
怒りに震えた語尾は、間違いなく失態だ。
ああ、
破綻しそう。
壊れそう。
何もかも、失くしそう。
絶望に目の前が真っ暗になるってこういうことなのかもしれない。
強い夏陽を自分の体で遮っても明るく見えていた健二さんの顔が見えなくなりそうだった。
「おかしいよ、こんなの。」
健二の声も震えていた。
「こんなの、だって」
それでも懸命に、伝えなければならない一言を捻り出した。
「だって、逆じゃないか。」
そう言ったとき、大きな雲が、再建されつつある陣内家の上空を通過して、ふと陽が陰って座敷に影が落ちた。
健二の瞳に、怒ったような、悲しんでいるような、必死な顔の佳主馬が映る。
「順番が、逆だよ。」
告白する前にキスしちゃうなんておかしい と、健二ははっきりと答えた。
み みーん みんみんみんみんみん じ―――――――――ぃぃぃいいいい
「…は?」
「だ、だから、告白よりキスが先なんておかしいよ。」
「けんじさん?」
「告白して、オーケーをもらって、手をつないで、デートとかして、き、キスなんてそれからじゃないか。」
「健二さ」
「どうして最初がキスで次に告白なの?俺まだ返事してないのに、手だって繋いだことないよね?段階を踏まないとキスなんて、キスなんてできないよ!!!」
「健二さん!」
叫んだ健二の口を咄嗟に塞いで、佳主馬は起き上がろうとした彼に頭突きをかます。
悶絶した健二は、ふぐ、と呻いてから、ふらふらと畳に逆戻りした。
「…健二さん、ごめんね。」
痛かった?と塞いでいた手を移動させて赤くなった額を撫でた佳主馬が、ふうとため息をついた。
「ごめん。ぼくが悪かった。やりなおすから答えて。」
横向きに倒れ、膝を丸めた体にもう一度同じ言葉をかける。
「健二さんが好き。ぼくとおつきあいして下さい。」
前髪を掬い、目を見て再度告白すると、健二は顔を両手で覆ってしまった。
それでももごもごと何か言っているらしい健二の返事を聞き取ろうと両手両膝をついて、身を屈める。
「…………ふぁい」
隠しきれていない耳や、血圧が上がっているせいで太い血管が浮いてしまっている首が、真っ赤になっている。
晴れやかに笑った佳主馬が、こんなところまで赤くなるのか、と感心するくらい赤い手首を容赦なく掴んで引きはがした。
アルゴリズムで恋をする
(恋に公式はあるのか?)
「待って待ってまって佳主馬くん、か 待ってってば!!!!」
「健二さん往生際悪いよ。」
「だからあのね順序っていうものがあるよね!!!」
「ないよそんなの。誰が決めたの。」
「だっ」
「キスしたいし手も繋ぎたいし抱き締めたいし、あとデートだっけ?行こうね。全部やるよ。でも、やりたいと思った時にやる。待てないよ。」
「待とうよ!」
「やだ。」
「ま、まってくれないとおつきあいしないからね!!!」
「…………それもいやだ。」
「ど、どっちかえらびなさい!」
「……………………仕方ないから、今日のところはこのくらいにしといてあげるよ。」
「(た、たすかったぁ……!!)」
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13歳と17歳を見失っていることが明白ですね。
健二さんがここまで数学脳だとしたら、(多分)私だけが嬉しい(^^)。
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