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ジャイキリ一発目、椿×達海です。
バキタツの魅力はおっさんと青年が二人して噛みあわない感じで一方がわたわた他方がぼけっとしつつ、
お互いのことが根っこの部分で分かりあえる可能性があるところであると思う。
「椿、おいで。」
床に座った達海は窓からの月影を背に負って立ち尽くす椿に手を伸べた。
逆光のせいで分かりにくい表情がふっと音も無く降りて来てようやく、
「何泣きそうな顔してんだよ。」
ん?と首を傾げて、汗の滲む首に絡めた腕を引く。
胡坐をかいた恋人の目の前に両膝をついた椿は、まだ見下ろせる位置にある達海の目を情けなく潤んだ目で覗き込んで、その顔を晒していられないと言いたげに肩口に額を寄せた。
シャツの襟元を、じんわりと熱い涙が濡らしていく。
「泣くなよー。」
わざと間延びした声で緊張感を打ち消すように呆れてやると、椿の体がびくっと跳ねた。
「今度は何。」
何がそんなにつらいの苦しいの、達海は自分が言ったとおりに涙をこらえようとする背中をえらいえらいとさすってやった。
きっと椿にしてみれば一大事がまた何か起こったのだろう。
でも自分にしてみれば、きっとそれは小さくて取るに足りないことなのだ。
だから教えてやりたい。
心配しなくていいのだと言い聞かせて、キスをしてやりたい。
いつもこの目の前の優しくて幼い恋人は、ひとりで空回ってしまうのだから。
そんな所も可愛いが、笑顔の方が見たいのだ。
ピッチの上で時に忠実な犬のように、時に鎖を引き千切って檻を蹴破る猛獣のように、そして誰よりもゲームを愛し愛されて笑いながら駆ける最高のフットボウラーの彼が、自分だけのものになってくれるこの時間でも見たいのだ。
「答える。」
命令形でくいと練習着の背を引き目を合わせると、涙の止まった水気を孕む瞳を間近で見る事になった。
あ、綺麗だなあ。
呑気に見惚れていると、案外としっかりした声が返ってきた。
「俺、自分が最低だって、思ってたんス。」
またかい、とため息で知らせると、椿は尚も硬い声で続けた。
「違うんス。本当に、最低なんです。」
また うる、と目元に水が溜まる。
「監督が、監督でよかったと思ってしまったんです。」
「…へえ。」
達海はすっと目を細めた。
「嬉しいけど?」
分かっていてはぐらかすと、椿が血を吐くような声で違うんです!と叫んだ。
(うん、うん。わかってるよ。
お前は本当に優しいねぇ、つばき。)
声には出さずに頭を撫でてやる。はぐらかさないでください、と泣き声になってしまった愛しい声が降ってくる。
「監督はもっと走りたかったはずなのに、俺、最低だ。
監督がまだサッカーできてたら、出会えなかった。
こんな風に出会えなかった。
それが俺はすごく怖くて、だから監督が、監督になってくれて良かったって思ってしまった。
最低です、俺」
それがどんなに辛いことか、想像するのも恐ろしいくらいの絶望だって言うことを知っているのに!!!
「そんなことくらいで泣くんじゃないよ。」
達海は目を細めて、椿の涙を唇で拭った。
軽い音を立てて何度も、椿の涙の流れが落ち着くまで。
達海が両手で頬を包んだ、その手に椿がそろそろと手を重ねてようやく、達海はにっこりと笑う。
「あのな。お前考えが狭すぎ。」
「…え、」
「たとえばだ。俺がいままだ現役だったとしよう。そしたら俺何をしてると思う?俺個人の希望としては、プレミアのスーパースターだ!その時に弱いチーム渡り歩いて、プレミアの連中をギャフンと言わせるの。楽しいぜぇ?考えただけでゾクゾクするね!でも、もうさすがに35じゃなあ。スーパースター張る体力ねえかも。だったら日本に帰ってきてえな。ケンケンみたいにスーパーサブで、ここぞって時にスタジアムを沸かせてやる。ゲームに出てる時間じゃねえ、仕事が出来る選手がどんなもんか、見せてやるさ。」
「かんとく、」
「うん、だからね。何が言いたいかっていうとさ、俺はどこに居てもきっとお前を見つけるよって話。
お前はフットボールから離れられない。どう足掻いたってそう。そういう人間だろ?
俺もおんなじ。だからこうして監督してる。
だからね椿、俺がプレミアにいんならお前も俺のところまで来ればいい。俺のプレー見て、お前が追っかけてこないなんて俺思わないもんね!
俺が日本にいたら、話はもっと簡単だ。もし俺が試合で当たったりしてたら、お前のこと見逃すわけない。俺の方からも、お前を捕まえる。」
明るい、力強い声で織りなされる夢物語は、夜のしじまの向こうにキラキラと輝く幻想を椿に見せた。
TVの中のスーパープレイに魅せられ、彼を追おうと決意する自分。
そのスターの背中を追うためなら、と懸命に足を動かそうとする自分。
想像できすぎて、椿は今夜ここに来て初めて、かあ、と羞恥で頬を赤く染めた。
「ニヒヒ。な、簡単だろ?」
俺達はどうしたってここに落ち着くの。
達海はそう囁いて、何か言いかけた椿の唇を塞いだ。
「ここ、って…その……」
「キスが出来る位置。」
一番近い二人になったはずだ。
「お前はそう思わねぇの?」
「おっ、思います!!」
よいお返事!
椿の頬をむにゅむにゅ揉みこみ、達海はばちっと目を閉じた。
「えっ!?え…あ、あの……」
ここまで来て分からないと言えば、寛大な俺も怒髪天だぞ。
密かに物騒なことを考えていると、暗闇の中で、唇に震えるやわらかいものがふにゃりと押し当てられた。
(ここ一番、ってとこだけはモノにするんだもんなあ。)
可愛い奴め。
そして、どうしようもなく若く、幼く、優しい奴め。
残酷なくらいの優しさが自分に向けられることが苦しく、狂おしく、愛しくてたまらない、と思いながら、達海はしっかりと背と腰に回された腕の逞しさに酔った。
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椿達で一番に書きたかったテーマ。
個人的には、達海は怪我と引退の事に触れられたら嫌な気分にはなるんだけど、一応全ての整理をつけているイメージです。
椿に対しては、他と違う反応を返しそうだなとも。
その辺を言語化しにくいのでこの話を書いたのですが、ううん、やっぱり上手く言えない…。
達海と椿はフットボールに対する一番根っこの愛情とか執着を共有していて、お互いにそれを感じ取っていて、だからフットボールが自分にとってどういうものかを説明しあう必要はない関係だ、ということだったような…。
まだまとまってませんね、難しいなこのテーマは…。
また同じテーマで思いついたら、別のお話を書きたいと思います。
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2010/11/10 ジャイキリ(椿達) Trackback() Comment(0)
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